2021年5月7日付

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水をたっぷりと蓄えた田んぼが鏡面となり、青空と流れる雲を映し出す。辺りに目をやれば、人も農機もせっせと働いている。今年も地域で田植えが始まった。何かと自粛ムードが続く日常にあって、春らしい光景に安どする▼大型連休は親せきの田植えを手伝うのが決まりだ。農園主の伯父が指揮して稲苗を植え、他の者は手番に汗をかく。何十年と変わらぬ一家総出の作業である。筆者は本日も軽トラックを駆って、田んぼと育苗ハウスを往復する▼伯父は八十路に近いが、寄る年波に力強くあらがう。大型マシンを手足のように操り、不具合があっても動じずにさっと修繕する。自然の力を借りて、熟練の知識と技で育てる有機米の味は抜群。近隣住民から大小30枚もの田んぼを請け負うのは、必然たる信頼の証だ▼人口減少に伴い、農業にも担い手不足の課題が突き付けられている。農地集約や機械化、農事法人の設立と次々に対策が展開される。やり方はさまざまあれども、かかわる人たちは安全で豊かな食を守りたい―と思いを同じくしているはず。おいしい米は地域で育てる。守る方法もまた、地域ぐるみで考えられればと願う▼この春も腕に食い込むほど重い苗を運びながら、大地に足を踏ん張って明日の糧をなす仕事の素晴らしさを実感した。中学生の息子が「農業って大変だけれど、いいね」とぼそり。伯父はにかっと満面の笑みで返した。

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