2021年5月15日付

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米国のSF作家レイ・ブラッドベリの代表作「火星年代記」(ハヤカワ文庫、小笠原豊樹訳)に登場する火星人は茶色がかった美しい肌、黄色い貨幣のような目、柔らかい音楽的な声の持ち主と、なんともチャーミングに描かれている▼地球人の火星探検・植民をテーマとした同著は1950年の初版で、新版では地球人初の火星探査が2031年1月、火星への移住開始が33年8月となっている。物語が書かれた20世紀初頭の当時は、火星には高度な文明があると社会で広く信じられていたという▼SFの世界だと思っていた夢物語が現実になる日が来るだろうか。火星で酸素を人工生成したという米航空宇宙局(NASA)の発表に目を見張った。報道によると、火星の探査車に搭載した装置で大気中の二酸化炭素から酸素をつくり出す実験に成功したという▼実験で生成した酸素は宇宙飛行士1人が10分間呼吸できる程度の量だが、NASAの関係者は、「いつの日か人類が火星に降り立つのを目にするという目標に向け、大きな確信をもたらすもの」(時事通信)とコメントした。有人探査実現のための一歩が記せたと▼〈人類は小さな球の上で/眠り起きそして働き/ときどき火星に仲間を欲しがったりする…〉。谷川俊太郎さんの詩「二十億光年の孤独」の一節を思い出しながら、はるか遠い赤き星の大地でミッションに励む探査機にエールを送る。

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