同人誌「窓」に旧料亭・信濃のドキュメント

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「窓」第9号のドキュメント「小池志保子さんが語る料亭信濃とその周辺」に掲載された昭和30年代の信濃の正面入り口。往時の様子をしのばせる

「広く文芸の試みをする場」として同人誌「窓」を発行する「窓の会」(三井夏海発行人)は、エッセー、小説、研究ノートなどを収録した第9号を発刊した。明治末年から昭和50年代まで県内でも有数の規模を誇った、諏訪市大手町の旧料亭「信濃」を物語るドキュメント「小池志保子さんが語る料亭『信濃』とその周辺」も発表。かつての地域文化、大手町のにぎわいを映し出す貴重な証言が盛り込まれている。

同人誌「窓」は、一昨年亡くなった文筆家市川一雄さんが中心となって創刊。今号には河西節郎さん(諏訪市)のエッセー「山寺探訪」、三井さん(千葉県市川市)の小説「なりわい(二)」、渡部清さん(東京都北区)の研究「台風と武士」などを掲載。

「信濃」は牛山一貴さん(諏訪市)が、料亭の三代目女将を努めた小池志保子さん、長女の小松まやさんを取材し、関係書物などを資料に、時代背景を交えて執筆した。

料亭は1909(明治42)年、本館や離れ4棟、庭園などを建設。小池邸に今も現存する離れの「菊の間」と「桐の間」の2棟は、高い建築技術を持った大工30人が3年掛けて仕上げ、当時から建築関係者の高い評価を受けている。

創業以来3代にわたり、政財界の会議の場所としても独特の存在感を持っていた「信濃」。後には結婚式場として、1日5組もの披露宴を行ったことが記されている。この間、画家の東郷青児や俳優の森繁久彌、横綱の吉葉山ら政財界、文化人、スポーツなど各界の多彩な著名人が訪れ、幅広い交友がしのばれる。

一方、漬物シーズンには野沢菜130杷、上野ダイコン800本を漬け込むなど料亭ならではの内側にも迫り、繁忙期は家族や従業員が総出で乗り切った過程が想像できる。こうした「信濃」の歴史を語る中から、周辺の料亭や花柳界のにぎわいなども読み取れ、大手町の往時を伝える一編にもなっている。

表紙は諏訪市の並木口通り周辺に注目した常田栄二さん(下諏訪町)のペン画「踏切」。A5判。114ページ。問い合わせは三井発行人(電話090・8588・0543)へ。

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