2021年7月28日付

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世界が注目する舞台で、大見えを切って幕を開けた東京五輪。選手たちが流す悲喜こもごもの涙は、筆舌に尽くしがたい練習の厳しさと苦しみを物語り、胸に迫る▼どんな場にも舞台裏がある。華々しい見せ場を支える労苦が凝縮している。競技の陰で黙々と床を磨き、場を整え、炎天下で案内に立つ五輪スタッフたち。開催への批判や醜聞を背に受けながら責務を果たすその胸内には、「選手の最高のパフォーマンスのために」との強い信念があろう▼地方では新型コロナによる経済打撃との戦いが正念場にある。経営はいずこも死活の瀬戸際だ。とりわけ影響が深刻な観光業界、息を殺すように耐えているかと思いきや、ホテル紅や(諏訪市)の唐澤豊明副支配人は「すごく苦しいのに社内はむしろ活気がある」と素人の浅慮を一蹴する▼宿泊客向けの体験企画を新たに十数種も作ったり、着物に地酒、障がい者への接遇など社員がそれぞれ得意の分野でもてなしの技を磨いたりしてサービス充実に余念がない。皆で知恵を出し合い認め合い、実現する過程が社内の結束も強くした▼周辺他社も同様で、総出で浴場を大掃除した、長年懸案のカーペットを張り替えた、部屋を改装した―などと思い切った改善が進む。端麗な応接で客を迎えるフロント裏には、苦境に折れないプロの意地もある。メダルはないが企業生命をかけた勝負に果敢に挑んでいる。

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