2021年11月19日付

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のどかな天気に誘われて、散歩ついでに近くの公園に出かけた。だいぶ葉を落としたイチョウの近くのベンチに腰を掛け、息を整える。こうしてまじまじとこの木を見上げるのはいつ以来だろう。記憶をたどってみたが思い出せなかった▼ごつごつとした幹の感触を確かめているとき、葉祥明さんの詩「成長するためには」を思い浮かべた。イチョウは表皮という殻を破ってたくましく育つ。それはきっと痛みを伴うことだろう。いくつもの亀裂が走る木の幹を手でさすりながら、痛みを想像してみた▼人もまた、まとっていた外皮を一枚ずつ剥がすようにして育つ。体になじんだ殻を脱ぎ捨てるのは勇気がいる。〈…ああ、その痛み無しには誰も成長出来ないのだ〉と詩人はうたう。昨日よりも一回り大きく成長するために、痛みをこらえて頑張る人の姿が重なる▼こらえ切れないほどの痛みに襲われているとしたら、そのときは周囲の助けがいる。警察庁によると、国内の自殺者は昨年、リーマン・ショック直後の2009年以来11年ぶりに増加した。2万1千人余の尊い命が失われている。女性や若年層で増えているという▼長引くコロナ禍が人の心に暗い影を落としているのは間違いない。21年版自殺対策白書は特に働く女性が追い詰められている実態を明らかにしている。木々の落葉に冬の到来を実感しながら、心にもぬくもりがほしいと心底思った。

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