2021年12月7日付

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普段は手紙の一通も書かない筆無精である。仕事で活字と向き合うのに疲れて意欲が湧かない―とそれらしく敬遠するが、”ずくなし”の言い訳にほかならず。それでも、この時期には欠かさずペンをとる。年賀状を書くためだ▼始まりは小学生時代。担任の男性教諭が学級児童みんなに年賀状を出してくれた。年間200日以上も顔を合わせる先生が、一字一句を整えて丁寧に新年のあいさつをつづってあった。「決意を新たに、姿勢を正してまた会いましょう」▼自分あてに書状が届いた高揚感、気にかけてもらっている喜びを感じつつ、下手なりに心を込めて返事を書いた。翌年からは自ら先生へ一筆したため、同級生とも年賀状をやりとりしたものだ。あれから40年ほどたつが、記憶は少しも色あせることがない▼現代ではペーパーレスによる環境保全や効率化を目的に、企業などで年賀状の交換を見合わせるようになってきた。しかし、個人にまでもその風潮が及ぶのはどうか。書くも書かぬも自由なのに。代わりにメールであいさつが届くこともあるけれど、何とも味気なく、心が動かない▼慌ただしい年末に年賀状を書く意味とは何だろう。近い間柄の人はもちろん、再会の礼を欠いている恩人、遠くに住む旧友らを思い、互いの距離感をぐっと縮める力が一枚の紙にある。便利な世に失いたくない心の文化があると信じ、やおら文机へと向かう。

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