2022年1月29日付

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「暖かくなってきましたね」。諏訪湖の解氷を話題にすると、K先輩は《みづうみの氷は解けてなほ寒し―》とぽつり。「赤彦ですね」と返すと、うれしそうに「まだ寒いよ」。緊張が緩み、会話が弾む予感が漂う。新聞社で働く喜びは、海千山千の面々と交わす当意即妙のやりとりにある▼赤彦は、諏訪市出身の教育者でアララギ派の歌人として活躍した島木赤彦のこと。K先輩が持ち出したのは赤彦の代表作と言われる有名な短歌で、下の句が《―三日月の影波にうつろふ》と続く。大正13年1月に「諏訪湖畔」と題して詠んだ作品である▼斎藤茂吉、久保田不二子選の「赤彦歌集」によれば、当時、赤彦が編集する短歌雑誌「アララギ」は中央で歌壇的位置を確立し、自らの歌の道も安定期に入っていた。諏訪湖を見渡す下諏訪町高木の柿蔭山房に庵を結び、念願だった万葉集の研究に就こうと準備を進めていたが、病に倒れ、大正15年3月に49年の生涯を閉じる▼今季の諏訪湖の御神渡りは出現しない見通しが強まったという。しかし、ここ数日は冷え込みが厳しい。きょうは「二十六夜月」で明けの三日月に向かう。月の光を湖水の上に眺め、三寒四温を繰り返しながら春に向かう寒さに触れてみようか▼無駄口をたたかないK先輩。郷土に根差して学び、地域に生きる人々の視点で書いているか。そう問われているようで背筋が伸びる思いがした。

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