2022年3月26日付

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つい2週間前まで硬く凍っていた田んぼの土くれが、湿り気を帯びてほころび始めた。諏訪大社の御柱祭は7年目に一度、雪解けの4月から芽吹きの5月にかけて行う。奥山から伐り出されたモミの巨木は軟らかい大地を削り、土ぼこりを上げながら里に下る▼御柱は特定の人だけで営む祭りではない。地域総出で綱を曳き、子どもからお年寄りまで自分に見合った役割をこなす。野良仕事に近い。誰もが参加できる祭りであり、一人ひとりに見せ場がある▼地域に暮らす若者たちは御柱やメドデコに乗り、元綱や梃子、木やりといった仕事に携わる。それを名誉とする。彼らは日ごろから地元に貢献し、周囲に認められて係に就く。その後の心掛けと集団に生じる力関係によっては、曳行の中心を担う人物に選ばれていく▼《男見るなら七年一度 諏訪の木落し坂落し》。諏訪の男たちは6年前、いやもっと前の御柱祭からしのぎを削り、今回の出番を待っていた。大群衆が見守る一世一代の大舞台でこん身の力を振り絞り、命を燃やす。荒ぶる姿は刹那。普段は目立たない場所で、地道に仕事をしている穏やかな人たちだ▼上社山出しが1週間後に迫った。新型コロナの影響で御柱はトレーラーで運搬される。木落しも川越しもない。おんばしら男は「つらい」と泣いた。それでも大地を踏み締め、祭りの準備を続ける。式年造営の力の源泉がここにある。

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