2022年4月28日付

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どこかの会社の新入社員だろう。パリッとした作業着がまだなじまない若者の一団が街なかで設備を前に熱心に話を聞いている。緊張と意欲が入り混じってみなぎる姿は、新緑の芽吹きとも重なってすがすがしい▼職場では初めて尽くしに気が緩められず、さぞお疲れだろう。が、古株も実は緊張している。恥をさらせば元来のそそっかしさに年波も押し寄せて、新人とはまた違った意味で冷や汗と反省の毎日。社会は日々変わり、前例も経験も大して役に立たない。どうあるべきかと不動の軸を確かめつつ、次の一歩を探るありさまだ▼立ち位置はだいぶ違うけれど、手探りという点で今年の御柱祭は似た思いを抱く人がいるのではないだろうか。前例に倣った準備はままならず、作業への動員にも気を遣う。参加したくてもできない人が多く、武勇伝や失敗談を交えて経験と伝統を語り継ぐ場も持てない▼それでも現場では「その時」に向けて、全ての役員がなすべき仕事を粛々と進めている。限られた準備、練習の中で、先人からの知恵と技術を出来うる限り次代に伝えよう、学ぼうとそれぞれに懸命な姿がある▼多くの制約にも諦めずに知恵を絞り、御柱の威厳を損なうことなく無事、山から下ろして里曳きへとつないだ努力に頭が下がる思いだ。かつてない状況に、この地の人が脈々と受け継ぐ「神への奉仕」という不変の真心も際立ってみえる。

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