2024年4月4日付

2024/04/04 06:00
八面観

 子育ては子どもの独り立ちが最終目標。小学生までは一緒に遊んでかわいがった長男だったが、中学生になると見守りながらも親の価値観を押し付けるような言動は慎んだ。判断力を養ってほしかったからだ▼彼はそれをいいことに中高とインターネットのオンラインゲームにハマった。長期休暇は昼夜逆転も頻繁で、ゲームの弊害を憂慮したこともある。だが、それも含めて自分をコントロールしなければいけないのは長男自身。だから放任の姿勢を続けた。高校3年の昨年、父親は進路の相談を一度も受けないまま、彼は進学を決め、今月から都会で一人暮らしを始めた。引っ越し当日。彼のゲーム環境を聞いてみた▼今のゲームは国内外の仲間とつながれる。「友達の数は?」「13人」「遠くの人は?」「北海道と沖縄。最近は福岡の人もいて、ゲーム中に博多弁で話すようになった」。ゲームの会話機能で、夜中に自室で大盛り上がりしていたのは、この仲間たちだった▼仲間にはコミュニケーションが苦手な男子もいて、初めて会話をしたのは知り合って2年後だったという。ゲームのうまさが評価される世界とはいえ、2年間も会話しないのは通常では理解しがたい。「会話のきっかけは?」「ん、別に…自然」▼その関係性に偏見がない長男の感覚に感心した。学校という実社会とゲームという仮想空間で暮らす彼の成長の過程を楽しみたい。

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