「利害よりも物を生かす根本思想が必要」。旧制諏訪中学校(現諏訪清陵高校)の名物教師で、大正から昭和にかけて物理などを教えた三澤勝衛は、ウナギとアマゴの性質を対比しながら、こんな言葉を残している▼諏訪のある村に、清水が豊富に湧き出す場所があった。水温は一年を通してセ氏12度。川底の小石に2、3種の水生昆虫が生息し、水中には相当の空気が溶け込み、魚を飼える環境が整っていた▼三澤が村の有力者に魚の養殖を勧めると、返事は「あの川で魚を飼うことはだめだ」とつれないものだった。実は数年前にウナギで失敗し、放したウナギがどこか行ってしまったのだという。魚がいないわけではない。ときどきどこからともなくアマゴがのぼってくる▼暖水性のウナギが去り、冷水を好むアマゴが居着いた、という話である。確かにウナギの方が需要があり、高く売れる。富の大きさに期待も膨らむが、三澤は風土と魚の性質を探究し、両者を生かすことを忘れてはいけないと諭す。利益偏重の無理な経営を「われわれ人びとが生をこの世に享(う)けた意味が成り立たない」と戒めた▼小林製薬が製造した紅麹(べにこうじ)配合サプリメントを摂取した人に健康被害が確認されている問題。会社はウナギを求めていなかったか。みそや酒、しょうゆ、漬物、寒天…。信州には発酵文化を育んできた「風土産業」が深く根付いている。今こそ大切に守りたい。
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