青々と早苗がそよぐ田んぼのあぜで、大小2羽のトビが一つの獲物を熱心についばんでいる。何口か食べては相手に譲る。食事と見張りを仲良く交代して見守り合う様子が心温かくて笑みを誘われた▼トビは単独行動で生きる鳥だと勝手な臆測で思い込んでいたし、同じ場所で何度か続けて見かけたからなお興味を引いた。2羽の体格差はかなり大きくつがいなのか血縁なのかも分からないが、唯一の食べ物を分かち、協力して野生の厳しい環境を生き抜いている▼雨雲が空を低く覆った日には、路上のごみ袋をあさる2羽のカラスに出会った。残飯をくわえると百メートルほど先の民家の裏へ飛んで行き、10秒も経ずに戻ってくる。周囲の危険を気にも留めず一心に、交互に往復を繰り返す。よほどおいしい餌にありつけたのだろう▼すると1羽が目前に舞い降りた。菓子のかけらを草むらの中に置き、枯れ草で念入りに隠すと再び餌探しに。新たなかけらは近くの植木、次は向かいの木へ…とそこかしこに仕込んでいく。でもそのお宝は間もなく降る雨で流れてしまうだろう。徒労に胸が痛んだ▼台風接近、その晩からの雨の激しさにカラスが大急ぎだった理由にやっと気づいた。鳥たちは仲良く支え合い、先の変化や危険を予測して備え、有事を生きる術を毎日実践している。それを眺めていただけののんきさが恥ずかしい。梅雨は間近。気を引き締めよう。
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