森や川などで働く「名人」から話を聞いて仕事や生き方などを一人語りの文体にまとめる「聞き書き甲子園」(農林水産省など主催)で、伊那市を訪れた県外の高校生による成果発表会が5日、同市創造館で開かれた。地元住民ら約30人が参加。高校生たちが取材した同市の名人の紹介や対談を通じ、名人から学んだことを伝えた。
伊那市は昨年度初めて聞き書き甲子園に協力。原木シイタケ栽培やみそ造り、すがれ追いなどさまざまな名人7人が県外の高校生7人を受け入れた。取材は昨年8~11月に2回、名人と一対一で実施。うち2人が最高賞を受賞し、マツタケ作り名人の藤原儀兵衛さん(86)を取材した愛知県の国際高校3年の成田和香さんは農林水産大臣賞に選ばれた。
発表会で成田さんは藤原さんについて、日本で初めてマツタケの生える場所「シロ」を増やすことに成功させたと紹介。3年前からはかかしに香水を仕込ませた結果、「人間の存在を察知し、マツタケを食べるシカやイノシシが寄り付かなくなった」と最近の成果も説明した。
「大きな目標を持つという藤原さんの言葉を大切にしたい」と成田さん。現状に満足しない向上心や探究心に感銘を受けたと振り返った。藤原さんは「65年間のマツタケ作りを数時間の取材でまとめてくれた」と感心していた。
聞き書き甲子園には全国88人の高校生が参加し、11人が受賞。伊那市の関係では成田さんのほか、木工ろくろ・漆塗り名人の宮原勝さん(73)を取材した金沢大学人間社会学域学校教育学類付属高校3年の西田空麗さんが環境大臣賞、ザザムシ漁名人の中村昭彦さん(79)を取材した神奈川県立川和高校3年=当時=の小嶋涼香さんが写真優秀賞をそれぞれ受賞した。
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