資源回復への道 ワカサギ大量死1年-4 

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県の今年度の諏訪湖環境改善事業は2億7039万円。同湖の総合計画「諏訪湖創生ビジョン」の策定、貧酸素対策、生態系の保存や水辺の整備、水質保全対策などを実施する。ワカサギの大量死につながったとみられる貧酸素対策は溶存酸素濃度などの測定やプランクトン調査など測定、調査に重点が置かれている。

大量死を受け、3月までに4回開いた「諏訪湖環境改善に係る専門家による検討の場」(有識者会議)では測定データの乏しさが原因究明を難航させた。測定、調査の充実はこの教訓を踏まえた形だ。県水産試験場諏訪支場の伝田郁夫支場長(57)は「湖の生物多様性の確保に向けた対策を進めるためにも今の諏訪湖の状況をきちんと把握することが大事」と語る。一方で「測定だけでは何も変わらないのは事実。将来のために必要だが、今夏は測定の異常を観測しても打つ手はない」ともどかしさを募らせた。

諏訪湖は治水、利水を目的とした河川法に基づき、防災力の強化が図られてきた。伏流水を遮るとして漁業関係者が見直しを求める湖岸に打ち付けられた矢板について県諏訪建設事務所整備課は「地盤が軟弱な湖の周囲にとって矢板は道路の沈没などを防ぐためにも不可欠」とする。

かつて諏訪湖には入り江という意味の「エゴ」と呼ばれる水生植物の豊かな場所があった。諏訪湖最大とされた「渋のエゴ」は水生植物の宝庫で、多数の魚が卵を産み、幼魚を育む場所だったが、諏訪湖流域下水道終末処理場用地として埋め立てられた。終末処理場は工業排水、生活排水から汚染物質や汚れを取り除き放流することで、諏訪湖の浄化に大きな役割を果たしている。諏訪湖は1950年代から産業の発展、生活水準の向上により、湖の富栄養化が急速に進んだ。アオコが発生し、悪臭が目立った。とはいえ、アオコの正体である植物プランクトンは光合成によって水中に酸素を供給する存在でもある。諏訪湖の水質は今、数値の改善傾向が急速に進んでいる。

有識者会議で委員長を務めた沖野外輝夫信州大学名誉教授(80)は「ワカサギの大量死は起こるべくして起きた」と語る。50年代から始まった富栄養化を受け、県は「このままではいけない」と、水質改善に力を入れた。”きれい”な湖を目指している。沖野名誉教授によると、「諏訪湖の水環境は中身が急速に変わっている」と話す。環境の変化への対応は動物の方が植物よりも遅い。「諏訪湖は今、とても不安定な時期。急速に変わる水の変化は特に魚を含めた動物にとって過酷だ。”きれい”な湖とは一体誰にとってなのか。貧酸素に起因する被害は今後も起こるだろう」と語った。=おわり

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