2017年08月29日付

LINEで送る
Pocket

送り盆の翌日、こうべを垂れた稲穂の間から、湧き立つようにトンボが舞った。真夏並みの暑さが続いても、自然界の生き物はよくぞ季節を違わないものだ。乱舞といえば、辰野からうれしいニュースが舞い込んだ▼絶滅危惧種のチョウ・ミヤマシジミが今年、飛躍的に増えた。近年、個体数が減り続け、国内で長野県南部が「最後の生き残り」といわれている種だ。町内唯一の生息地でも4年前には数匹しか見られなくなり、「保護の正念場」といわれた▼今年は1度の調査で150匹超を確認。今より自然が豊かだった30年前と比べても過去最多という。3年前、この生息地は土木工事で一時壊されることになった。この際、施工する県と地元住民、信大が協力して工事とチョウの復活を両立させる工法を考えた。工事後は、地元の中学生も参加して食草を植え、育てた▼絶滅危惧種の生息地を守りながら手を入れる施工事例は県下でも数少ない。辰野での成功は今後の公共工事のモデルになるだろう。当今、野生動物の姿が見られなくなった│という話題が多い中で、劇的に復活させた町民の誇りにもなるといい▼野生動植物のたくましさは人間の想像以上だったとはいえ、わずかな環境の変化でたやすく絶えるはかなさも併せ持つ。今や、自然は満ちるも絶えるも天の計らいではなく、人間の手に懸かっている。小さな命の乱舞にその重さを実感する。

おすすめ情報

PAGE TOP