備えは今 豪雨災害10年[4]山づくり

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森林税を活用して間伐した諏訪市神宮寺の里山。豊かで健全な姿になってきたという

森林税を活用して間伐した諏訪市神宮寺の里山。豊かで健全な姿になってきたという

木はなぎ倒され、黒々とした泥とともに諏訪湖畔や天竜川沿いの集落に向かって駆け下った。10年前、被害が集中した岡谷市の西山地域。年降水量の4分の1に相当する雨が3日間に降り、山は耐え切れず悲鳴を上げた。

西山地域では大小91の山腹崩壊が確認された。発生源近くに倒れた針葉樹は、樹高20メートルに対して根の深さは1メートルほどだった。暮らしを支えた里山は遠い存在になり、放置され荒れ果てた。

当時、岡谷市花岡区長だった小口廣明さん(71)は「手入れを怠ってきたツケが回ってきた」と悔やむ。荒廃を心配し、里山再生に乗り出した矢先に起きた土石流災害だった。治山工事完了後、地域を挙げて植樹活動や子どもたちの森林活動・学習を開始。12年には「西山里山の会」を設立し、山地防災パトロールにも乗り出した。「今度は地域の番」。森林の防災・減災に向けた合言葉だ。

諏訪市神宮寺では、生産森林組合と里山整備促進委員会を核に整備を進める。間伐でカラマツなどの針葉樹は根張りを良くし、崩れやすい場所には根張りのいい広葉樹を増やす。沢の侵食を抑える構造物「棚入れ」も自分たちで造った。災害に強い森林づくり指針で示す「適地適木」「適正管理」を実践する。

若い世代や子どもたちに目を向けてもらうため、山菜やキノコ、昆虫採集も楽しめる里山が目指す姿だ。

県諏訪地方事務所林務課によると、08年度に導入された森林税による管内の里山間伐面積は昨年度までに1202ヘクタールとなった。豪雨災害の経験から機運が高まり、被災地周辺で里山整備が加速した。だが、税事業以外の間伐を含めて民有林面積全体の2割弱が済んだ段階で、手入れが必要な山は多く残る。取り組みに地域の温度差もある。

神宮寺生産森林組合長の藤森正紀さん(67)、前組合長の小林利行さん(69)は「自分たちの手で里山づくりをすることが重要だ。安心・安全で、子どもたちの記憶にも残る山にして次代に引き継ぎたい」と力を込める。地域ぐるみで健全な森林にし、人と里山との距離を再び縮めていくことが求められている。

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