2020年10月14日付

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日本語に関する著作で知られる大東文化大学教授、山口謠司さんが著書「文豪の凄い語彙力」(さくら舎)の中で二文字重なると激しい状態となる言葉を紹介している。永井荷風の作品「雨瀟瀟」を例に引いた「瀟」の文字がその一つ▼すっきりしていて上品なさまを表す「瀟洒」などの熟語があるが、「瀟々」と重ねると、風雨が大変に激しい様子という意味になる。また「颯爽」の「颯」も「颯々」と連ねると同様。「風、颯々として、雨、瀟々たり」とは、雨風の強い荒れた空模様を意味する▼と、読んでいて頭に浮かんだ文字がある。「禍々」。一文字でも十分過ぎるのに、二文字重ねることでいまいましさが強まる「禍々しい」との表現になる。その年の世相を1字で表す「今年の漢字」の候補にも挙がってきそうな、そう、「禍」の盛り合わせである▼新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行をいかに防ぐか、これから寒さが増す時期を迎えて警戒感が強まっている。発熱やせきなど症状に共通点も多いといい、医療現場が混乱しかねない。二つのウイルスによる「禍」の重ね合わせだけは避けたい▼新しい生活様式を実践しながら感染予防を徹底していくしかない。中国史記の金言に「禍福は糾える縄の如し」がある。不幸と幸福は変転するものであると。厳しい冬場をなんとか乗り切り、「禍々」の二文字を「福々」に転じたい。

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