諏訪湖ヒシ 適正刈り取り量検討開始

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県が設置した諏訪湖の環境改善専門家会議で、夏~秋に湖面を覆う浮葉植物ヒシの適正刈り取り量に関する検討が始まった。現在は繁茂面積の1割程度を目安に、専用船や手作業で年間500~600トン(ぬれた状態)を除去しているが、勢いを大幅に抑えるまでに至っていない。複数の委員が現状では不十分との見解を示しており、刈り取り量増加の方向で議論が進んでいきそうだ。

「刈っても放っておけば3年で元通りになる。(繁茂面積の)3分の1以上取らないとヒシは減らせない」。県庁でこのほど開いた2回目の専門家会議。元県水産試験場諏訪支場長の武居薫委員は、かつての調査結果を基にこう説明した。さらに、流入河川に繁茂が拡大していることを問題視。「湖内で取っても種が流れてくれば元の木阿弥」として河川の刈り取り量も増やす必要性を訴えた。

窒素やリンを吸収して水質浄化に役割を果たしたり水鳥が利用したりする半面、湖内への光を遮って沈水植物の生育を阻害したり、沿岸部の水中酸素濃度を低下させたりしている。ヒシを急激に減らしたことでアオコが増えた事例が他水域であり、現在の「1割程度」は、環境や生態系への影響を見極める必要があるとして設定された。

東大大学院教授の山室真澄委員は、ヒシ刈りとアオコ発生の関係について「根拠がない」と主張。自身が諏訪湖で行った潜水調査を踏まえ「ヒシの下は酸素がほぼゼロ。過密すぎて魚が入っていける状態でない」とし、会議で「毎年同じように生えてくるのを繰り返し取るのは経費的にも無駄。全量除去でいい」と意見を述べた。

専用船の刈り取りは窒素・リンを十分に吸収したところで湖外に出し、水質浄化につなげることが主な狙いだ。ただ、貧酸素対策では繁茂させないことが望ましく、春のうちに湖底から種子を取り除くなどの方策をどう組み合わせていくかも焦点だ。信大山岳科学研究所准教授の宮原裕一委員は、今年の湖で目立つ沈水植物について「酸素供給面からは好ましい傾向だが、増えすぎるとヒシと同じような問題が起こりうる。管理手法をいまから考えていかないといけない」と指摘する。

航行障害や景観悪化をもたらしているとして、漁業・観光関係者らがヒシの刈り取り量増加を支持する一方、野鳥愛好者は「水鳥が利用するなどいい面もある」と強調。日本野鳥の会諏訪支部の林正敏支部長は取材に、「沈水植物の再生に向けてある程度は刈っていくべきだが、多様性の観点から群落は必要。抽水植物を含め、バランスの取れた豊かな水生植物帯を望む」と話した。

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