2020年12月3日付

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道路の正しい呼び名を調べていくと「停車場」という言葉にあたる。明治時代の名づけだそうだ。電車に載せて各地へ発送する物資、県外から到着した珍しい品々が荷台に満載されて、せわしなく駅前を行き交うさまが想像される▼開業当時を物語る築約80年の富士見駅舎内に来夏、町が移住定住の相談室を開く計画がある。板張り、平屋建ての素朴な外観はそのまま生かす方針という。「昭和レトロこそ富士見らしい」と町の担当職員。町外から新しい風を呼び込む窓口になる▼富士見駅の向かいでは昭和初期の料亭を簡易宿所にする準備も進む。町内在住の元ホテル支配人、賀来寿彦さんが町内外の要望に応えて一念発起した。駅周辺では近頃、出店希望が多く、廃業店のシャッターも次々に上がっている。若い世代にも昭和の雰囲気が魅力なのだそうだ▼ITで瞬時に全世界とつながる今と比べたら、かの時代は世間も狭かったろう。だが、その中で物と人と情報を活発に回して今日まで地域を発展させてきた。昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大で活動範囲を狭めざるを得なくなり、事業者も住民も地元に目が向き始めている。足元を大切にする気持ちも育ちつつある▼「時代遅れだっていいじゃないか」。堅実に、地に足をつけて生きてきた人々の歴史と風土を受け継ぎ、競わずゆっくり生きることの面白さをこの町は語っているように思う。

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