100歳の工女生き生き 80年ぶりに糸取り

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真剣なまなざしで糸取りする大塩さん

昭和初期の平野村(現岡谷市)の製糸工場で、工女として働いていた山梨県南アルプス市在住の大塩ふじ江さん(100)が28日、岡谷蚕糸博物館を訪れ、約80年ぶりに糸取りを体験した。館内の体験コーナーにある座繰り機に座った大塩さんは、真剣なまなざしで「接緒」(繰糸中に新たに別な繭を補充するため糸口をつけること)を行い、「指先が覚えていた」と、生き生きとした笑顔を見せた。

大塩さんが同館を訪れるのは今回が4回目。大塩さんに付き添ってきた通所先のデイサービス施設職員によると、以前に来館した時、同館の高林千幸館長から冗談半分に「ここでまた働きましょう」と声を掛けられたことをきっかけに、「昔の記憶が戻り、同館に連れてきてもらうことが生きがいになった」という。高林館長によると、この時は併設の宮坂製糸所で多条繰糸機の接緒を体験し、「手つきは現役の工女さんそのものだった」という。

正午前に博物館に到着した大塩さんは、車いすで館内を見学。展示してある全盛期の製糸工場の写真などを見ながら、同館の学芸員の聞き取りに答えて、川岸にあった片倉製糸マルイチ工場に16歳の時から3年間勤めたこと、座繰りは糸巻きが五つある「五つ枠」だったことなどを話し、「一生懸命やったから、成績は良かったよ」と、当時を思い出していた。

施設職員らの介助で車いすから体験用の座繰り機に座った途端に大塩さんの表情は一変。真剣なまなざしで煮繭器の中にある繭から紡ぎ出される糸の動きを見つめ、慣れた動作で接緒を始めた。学芸員の問いかけに、「(煮繭器の湯が)ぬるいね」「繭を煮る臭いが懐かしい」「指先が覚えていた」と、100歳には見えない生き生きとした表情で答えていた。

大塩さんが糸取りを行う様子を見守っていた学芸員の林久美子さんは、「左手の使い方が糸を無駄にしない使い方で、工女さんとして働いていた時の高い技術がわかる」と感心。高林館長は、「昔を思い出して、ここに来るのが生きがいになったと聞きうれしい限り。産業の中にこんな力があるのかと感じた」と感嘆していた。

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